占いコラム|ゾディアック・マン~12星座と身体の照応②

容姿に現れる天体の影響

ゾディアック・マンは医療の分野以外にも、人々の身体に見られる表面的な特徴を示すためにも用いられてきました。誕生時のホロスコープ(星図)に基いて個人の運命を占うネイタル占星術の分野では、容姿もまた天体やサインの位置関係によって定められるとされていたからです。たとえば、前回もご紹介した英国の占星術師ウイリアム・リリーは、木星がアセンダント(東方の地平線と太陽の軌道が交差する場所)にある時に生まれた人物は頭部、もしくはその木星が位置するサイン(星座)が示す身体部位に「イボやホクロが見られる」と述べています。

 

「私は天秤座(てんびん座)の25度がアセンダントにあり、そこに木星があるのを見た。すでに述べた通り、そこ[アセンダント]は顔を示す場所である。その相談者は、顔の右側で口のすぐ近くにイボかホクロを持っていた。(中略)また、彼女はウエストから尻の下部[天秤座(てんびん座)が対応する部位]にかけてホクロがあることを告白した…」

ウイリアム・リリー『クリスチャン・アストロロジー』第2集25章

 

占星術による人間の容姿の判断は、現代の占星術ではほとんど研究されなくなっていますが、伝統的な文献には各サインが示す外見的特徴が非常に詳細に描写されており、そこにはソディアック・マンに由来すると思われる記述が多く見られます。たとえば牡牛座(おうし座)(首)が強調されている人物が「しっかりした首」を持ち、双子座(ふたご座)(上肢)が強調されたホロスコープを持つ人物に「長い腕」や「細くて芸術家を思わせる指」が見られるとされるのは、それらのサインと照応するボディ・パーツと明らかに関連しています。

16世紀イタリアの人相学書『De humana physiognomonia』より

 

ソディアック・マンに見られる身体器官の調和

ソディアック・マンのシステムの興味深い点は、特にサインと内蔵の対応関係に見られます。 たとえば牡羊座(おひつじ座)は脳と、獅子座(しし座)は心臓と、射手座(いて座)は肝臓とつながりを持つとされていますが、これらの3つの器官には身体の中でもとりわけ多くの血液を蔵しているという共通点があります。牡羊座(おひつじ座)と獅子座(しし座)、射手座(いて座)は宇宙を構成する四大元素(火・空気・水・土)では火、つまり最も活動的なエネルギーを持つサインのグループとされていますから、それらがたっぷりと血(生命力)を蓄えた3つの臓器と関連付けられたのは偶然ではないでしょう。 また、いわゆる消化器系と呼ばれる器官の多くが、食物を飲み込む咽頭は牡牛座(おうし座)に、それを細かく撹拌する胃は蟹座(かに座)に、消化して吸収する腸は乙女座(おとめ座)に、不要なものを体外に出す排泄器は蠍座(さそり座)にという具合に、占星術では「受動的」と呼ばれるサインのグループに属していることも興味深い事実です。まさに、宇宙の秩序は身体の秩序であり、身体の諸器官の連携には、12サインのシステムに見られる美しい調和が反映されているのです。

『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』(15世紀より)

 

超細密ゾディアック・マン

ドイツの占星術家ラインホルト・エバーティン(1901-1988)は、伝統的なゾディアック・マンの身体対応論をより細分化した驚くべき研究を残しています。占星術のシステムでは黄道(太陽の軌道)は360度に分割され、各サインには30度の幅が設定されていますが、エバーティンはそれら360の度(ディグリー)の一つ一つに身体の360個の器官を割り振ろうと試みたのです。紙幅の限界からそのすべてを掲載することはできませんが、ここでは牡羊座(おひつじ座)の30度の身体対応をリストアップします。

(注:このリストの「1度」とは0度00分~0度59分の領域を意味する)

 

牡羊座(おひつじ座)1度 :大脳
牡羊座(おひつじ座)2度:中脳
牡羊座(おひつじ座)3度:小脳
牡羊座(おひつじ座)4度:松果体
牡羊座(おひつじ座)5度:右目または左目
牡羊座(おひつじ座)6 度:眼窩(眼球を内包する空洞)
牡羊座(おひつじ座)7 度:耳
牡羊座(おひつじ座)8 度:頬骨
牡羊座(おひつじ座)9度:水晶体(眼球のレンズ)
牡羊座(おひつじ座)10度:眼球
牡羊座(おひつじ座)11度:視神経
牡羊座(おひつじ座)12度:舌
牡羊座(おひつじ座)13度:脳梁
牡羊座(おひつじ座)14度:前頭葉
牡羊座(おひつじ座)15度:小脳外側葉
牡羊座(おひつじ座)16度:橋(脳幹の一部)
牡羊座(おひつじ座)17度:脊髄管
牡羊座(おひつじ座)18度:(左右の脳梁の?)神経接合部
牡羊座(おひつじ座)19度:脳梁
牡羊座(おひつじ座)20度:舌骨
牡羊座(おひつじ座)21度:外眼筋
牡羊座(おひつじ座)22度:頬筋
牡羊座(おひつじ座)23度:咀嚼筋
牡羊座(おひつじ座)24度:大頬骨筋
牡羊座(おひつじ座)25度:胸鎖乳突筋
牡羊座(おひつじ座)26度:頭蓋骨
牡羊座(おひつじ座)27度:脳弓
牡羊座(おひつじ座)28度:脳弓
牡羊座(おひつじ座)29度:耳管
牡羊座(おひつじ座)30度:耳下腺

 

伝統的なゾディアック・マンでは牡羊座(おひつじ座)は頭部を支配するサインですかが、なるほどエバーティンの身体対応リストでは頭部にある重要な器官のほとんどが網羅されていることが分かります。特に複雑な脳の構成要素を分類している点では、近代医学の解剖学の知識がしっかりと盛り込まれているといえるでしょう。他のサインに関しても、双子座(ふたご座)の15度は肩甲骨、獅子座(しし座)の28度は心臓の弁膜、天秤座(てんびん座)の6度は恥骨といった具合に、やはり伝統的なゾディアック・マンの理論を下敷きとした対応が示されてます。エバーティンのこの理論がどこまで有効であるのかは議論がありますが、いかにも物事の細部に拘るドイツの占星術家らしい研究ではないでしょうか。(つづく)

芳垣宗久

author:芳垣宗久

芳垣宗久(よしがきむねひさ) 1971年東京生まれ。伝統魔術研究家。 古典魔術研究の第一人者クリストファー・ワーノ...
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